【映画】『ハッピー・オールド・イヤー』あなたの捨てられないもの、なんですか? 借りたまま返してないもの、ありますか? ひとの気持ちは、簡単には仕分けられません。

「ミニマムスタイルは 仏教に通じるの 使わないってことは  不要ってことでしょ? 手放すの」

 この映画のトレイラーは、こんなセリフから始まる。

 そして本篇。主人公の女のコがぬーっと現れ、容赦ない冷酷さで、実家の断捨離を決行しようとする。なぜ、実家? そんなにミニマムを手に入れたいなら、ミニマムな部屋とオフィスを借りればいいのに。「ついていけないかも」と思った。主人公の顔も、あまり好みではなく。顔の輪郭が将棋の駒みたいだし。

f:id:megmikke:20210308195233j:image ところがどっこい、この作品はもっとずっと深い。最初のほうは、ただひたすら捨て続けていく。そして、捨てながら、彼女は気づいていなかった、たくさんのことに気づいていく。自分がプレゼントしたCDを捨てようとしたことを知った親友のキビシイ言葉、借りたまま返せず長い時間が過ぎ、意を決して返しに行った彼女に投げつけられたキツい一言...。

  出ていった夫を忘れられず、幸せだった頃のままの状態に強いこだわりを持っている母。こだわりの源泉は未練? 変化に対する恐怖? その姿は、何かの象徴なのか?!

 かつての恋人から借りたカメラを郵送、受取拒否で戻ってきたコトをキッカケに、会いにいく決心をする。そんな彼女を待っていた「再会」とは?

f:id:megmikke:20210308195236j:image あたし自身を振り返ってみると、ずいぶん断捨離したけれど、まだ残っていた。捨てられないトップは昔々のカセットテープ数百本。もう何年も聞いてないし、ラベルだけ残して、中身とケースは捨てようかな、と思う今日この頃。そして、モノが溢れ、こぼれそうな実家を思い出す。

 そうそう、この作品に登場する主人公の兄ちゃんが、いい味を出しているんだよね。

 f:id:megmikke:20210308223239j:image 自作の服をネット通販している彼は、茫洋としていて、つかみどころがないような印象がある一方、物事に動じず、懐が深そう。彼も何かの象徴なのか。てろんとしたTシャツが南国的で、いい感じ。

 ベトナム映画も、カンボジア映画も観たけど、タイ映画は初体験だと思う。この作品は、見終わってから長い時間、どこかに残っていて、生き方のヒントをくれた。どんなにインターネットが発達して、グローバル化しても、それぞれの国にはそれぞれの文化があって、それぞれの発展形がある。いろんな国の映画を映画館で観られるって、本当に幸せなことだと、改めて思った。