1972年。あさま山荘事件が起こり、学生運動が完全に終わり、時代は空虚な空気に包まれていた...と、あの時代を知っている人が回想するのを聞いたことがある。
残念ながら、あたしは時代の空気を感じられるほど大人じゃなかった。テレビドラマ、『前略おふくろ様』や『傷だらけの天使』に、導入部の喫茶店のシーンを彷彿とさせるような場面があったことを思い出しただけ。
音楽は内田勘太郎。アコースティックなボトルネックギターの乾いた音が、この映画にはピッタリ合っていると思う。時代の空気も表している。
ラストシーンに向けて映画が疾走する時、声を上げて泣きそうになったのは、なぜだろう。あの時代に翻弄されたともいえる桐島が、罪から逃げ切ったからか?それだけじゃないような気もする。
隣りの席には、中学生らしき男子が3人並んで座っていた。本当に彼らに訊きたかった。この映画を観た感想は? なぜ、この映画を選んだの?誰かに勧められたんだろうか。
別世界みたいだけど、50年前の日本はこうだった。50年間が「ほんの」なのか、遠い昔なのか。「東アジア反日武装戦線」という組織の名前を聞いて、何を感じるのか。
物心ついた頃から、駅や交番、いろんなところに桐島聡の写真が貼ってあった。こうして彼の人生は終わっていったんだな...って思うと、なんとも言えない感情が込み上げてくる。
【写真の下にますます個人的な感想が続きます】







観ていて、どこか美化しているような気がしたりもした。特に『時代おくれ』という歌と、桐島聡の生き方を重ねたところ。ちょっとついていけないなぁ...っていうのはあった。
何度も書くけど、この映画には時代の空気感が漂っていた。ほんの50年前、日本はこんな感じだったと、伝えてくれる映画だと思う。あの時代を知らない若者にも、機会があれば、ぜひ、観てほしい。
2025/07 @新宿武蔵野館
(敬称略)