【映画・ネタバレ】パラダイス・ネクスト〜主演 妻夫木聡 豊川悦司「南国 台湾。男2人、行き先不明の逃避行」というキャッチフレーズに撃ち抜かれた。レトロで昭和な?ノワール・サスペンス。

 冒頭、トタン屋根をつたって逃げる男。逃げる。逃げる。流れる音楽は、Benny More "Como Fue"。1950年代のキューバ音楽。溶けそうにとろっとろな、ボレロ

https://youtu.be/p4GggYWjRao

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 黎明の話が出てくる。ねっとりした台湾の空気が、スクリーンから客席に浸み出して来る。八角の匂い。舗装されていない道で、うっすら舞い上がる土埃。

「ところでさ、俺たち、どこへ行くの?」

「東へ逃げろ!」

「(映画の) 筋なんてどうでもいいんだよ」と言い放ったのは、故鈴木清順監督だったか。違ったら申し訳ないけど、この映画を観ていたとき、蘇ってきたのは、その言葉。筋よりも、大切なものがある。

 主人公の二人は白いランニングを着ている。タンクトップじゃなくて、昔のお父さんが着ていたランニング。枝豆をつまみに、ビールを飲み、プロ野球を見ていた、昔々の夏を思い出させるような。

 逃亡。肉の大きな塊をぶら下げたトラック。窓を全部開け、男二人並んで、座って。ランニングを着て。

 黎明。雨上がりの街を自転車とバイクで走る。妻夫木くん、豊川悦司、そして謎のヒロイン。

「ねえ、どこかへ行こう」

「どこへ?」

 楽園が待っているとはとても思えない、破滅的な匂いが漂って来る。どこか1990年代の台湾映画を彷彿とさせる。

 青く塗ったクルマで、走る。スローモーションで。

 謎のヒロインは、広大な敷地のお屋敷にたったひとりで住んでいる。何者? 彼ら二人と出会ったのは、宿命か。

 この映画を観たのは、新宿武蔵野館。来年、100周年だそう。映画をモチーフにした、手作り感満載のセットが、とってもいい雰囲気。空間すべてが、映画。大好きな映画館。

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【この後ネタバレ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 青く塗ったクルマが燃やされるのも、黎明。謎のヒロインは殺され、花に埋もれた状態で見つかる。妻夫木くんは、彼女と一緒に小舟に乗って、海へと漕ぎ出す。どこへ向かって? パラダイス・ネクストは、あるのか?

 そして、ラストにまた "Como Fue"が流れる。

 個人的に思い出の1曲。キューバに行ったとき、出国待ちの空港のロビーで、まるで映画の1シーンみたいに、この曲が流れた。この曲が流れるだけで、旅情。さまざま想いが、こみあげて来る。

 それにしても妻夫木くん、ちょいとオヤジになった気が...(°▽°)