【ライブ】上原ひろみピアノソロ アスリートとエクスタシー ひとり格闘技の戦士がコロナ禍に魅せる

 体育会系。全身全霊、出し惜しみもせず、持っているものすべてを出し切る。駆け引きもなし!

 例えば格闘技。相手はいなくても、自らのチカラと表現を武器にして、せめぎ合いながら戦う。かつて存在したことがない強烈な音を作り出すためか?! 聴衆をどんどん引きづりこんでいく。時に何かが憑依しているかと思わせるほどに。

f:id:megmikke:20200922011245j:image 彼女のライブを観るのは、4回め(今回は配信だけど)。初回は2005年のフジロック。最後の1曲しか聴けなかったので、改めて、品川のステラボールに行った。

「後ろの席の人も、ちゃんと聴こえてますか?」

 思いっきり後ろの席だったあたしは、気遣いに感動。拍手で応えた。

 しばらく時間が流れ、2017年。3回めは矢野顕子とのコラボ「ラーメンな女たち」。

「今日の相棒は、とっても調子がいいんですよ」。天下の矢野顕子が、そんな風に言うんだ...と、演奏以上に印象に残った。

 上原ひろみの音楽をいつも聞いているわけではなく(高尚過ぎて(^_-))、普段は歌入りのポップな音楽ばかり。ジャズもよくわからないし。

 聞く音楽と観る音楽は別物だと思っていて、とにかく彼女のパフォーマンスは、息をするのを忘れるくらい圧倒的。人間が生み出すものとして、ものすごい。

 だから今回だって、ホントは客席で観たかったが、32公演もあると根拠のない自信が生まれた。「取れるだろう」と。しかし、あっさり惨敗。

 配信は2回め、数ヶ月ぶりだったけど、強烈に進化していた。様々なアングルから鍵盤を叩く彼女に迫る。特に左からのカメラは感動もの。彼女が右を向いて座ったら、左からのアングルは、なかなか観られるもんじゃない。

 後半はアメリカ南部、ホンキートンク系な曲たち。ポインター・シスターズのデビューアルバムを彷彿とさせるような(と、あたしは思った)。曲調としてはこのあたりが好き。

 アンコールも引っ張らず、ささっと着替えて、すぐステージ戻ってくる。楽しそうなエネルギーを振りまいて、みんなを幸せにする。これからも彼女は、どんどん変化して、誰もたどり着いたことがない極みに達していくだろう。

 コロナ禍で、配信ライブという文化?!が生まれた。最近は、人数少なめに観客を入れ、配信も行う「ハイブリッド開催」が、増えてきている。それなら地方在住でも配信で気軽に参加できるし、チケットが超高倍率の争奪戦で入手できなくても、配信で拝める。子供が小さくてもライブが楽しめるし、ライブ観ながらチャットで幸せを共有できる。ハイブリッドは、これからも残っていくような気がする。

 それにしてもみんなライブに飢えている!ということを、しみじみ感じた夜だった。

 音楽の力が試されている。コロナ禍は、悪いコトばっかりじゃなくて、本当に大切なものは何か、ものすごくハッキリとわからせてくれた。

 彼女って、喋っている時のキュートさと、神様が降りてきたような演奏している時の落差が凄すぎて、それも大きな魅力!

<ライブ詳細はこちらで> SAVE LIVE MUSIC 上原ひろみ - Hiromi 2020公演 | Blue Note Tokyo


(敬称略)

2020/09/16 配信ライブ Blue Note Tokyo