後になって、ふっとした瞬間に蘇ってきて、じんわりさせてくれるブラジル映画。まさしく「可笑しくて温かい愛のお話」。
【観に行く時は 上映スケジュールを確認してにゃ】シネスイッチ銀座 - 上映中の映画
映画『ぶあいそうな手紙』公式サイト | 7/18(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
手紙の読み書きを頼まれた若い女のコなんて、大人しそうでインドアな印象を持つかもしれないけど、彼女はちょいと過激で、物言いもハッキリしてて、曰く付きの彼氏までいる。そんな彼女はエルネストにキッパリ告げる。
「そんなかしこまった手紙じゃ、全然響かない。読んで相手がどう思うか、考えなくちゃ」。
もともと頑固で、加齢と共に益々頑固になっているエルネストだったのに、なぜか彼女をすんなり受け入れていく。誰の言うことも聞かなかったのに。そして、彼の人生は大きく、いい方向に動いていく。
政治的なポエトリー・リーディングのシーンもあったり、ポルトアレグレの街もふんだんに出てきて、ブラジルのストリート感覚も味わえる。
そして主題歌『ドレス一枚と愛ひとつ』は、この映画のステキな鍵を握っている。歌っているのは、ブラジル音楽界の大巨匠カエターノ・ヴェローソ。
この曲が使われるシーンは2回ある。特にラストシーンで流れた時は、号泣したかった。
エルネストがウルグアイ出身という設定なので、ブラジル映画だけど、スペイン語がたくさん出てくる。この曲もスペイン語で歌われている。作者はアルゼンチン出身の大御所フィト・パエス。
1994年、初めてアルゼンチンに行ったとき、レコード屋の店員さんに薦められて買ったCDに入っていた、あたしにとって運命の1曲。この曲について語ると1万文字くらい書けそうなので、フィト・パエスについてはまた別の機会に。彼、今でもバリバリ現役です。ヨーロッパかメキシコに行って、絶対、ライブを観よう。
すっかりジジイになったけど、それでもやっぱりカッコいい。改めて、この曲を聴きながらあたしは部屋で思いっきり泣いた。歌詞はおおよそこんな感じ。
君と出会った
君にとても辛く当たったのは わかってるんだ
君は天使だったのか、それともルビー?
僕はただ君と出会ったんだ
星たちは再び微笑む
マンダラの鍵は燃え
僕はただ君を見てた
光たちはいつも魂に火をつける
僕が街で迷ったとき
もう君はわかってるよね
その瞬間 、君は泣いてもいいし
僕を殺してもいい
僕は誰も探していなかったんだ
ただ君と出会った
生きていくためにいくつか助けが必要だって
君は手紙を書いただけ
もう君はこの国に未練はないんだね
君はドレス一枚と愛をひとつ持っていた
僕はただ君と出会った...
最近のフィト・パエス この曲を歌う
ちなみにこの作品の舞台になったポルトアレグレは、ここ。ブラジル南部も南部、ウルグアイのすぐ近く。
エルネスト役のじいさん、どっかで見たことあるな...と思ったら、2005年に日本で初めて一般公開されたウルグアイ映画『ウィスキー』の主演俳優だった。ウチのアーカイブに当時どこかでもらった「ウィスキー新聞」があったので、写真を載せておきます。超充実の内容。
そう、映画『ウィスキー』も、心に染みる素晴らしい作品。全然カッコよくも美人でもない3人の俳優さんしかほとんど出てこない。靴下工場で働く3人の日常は淡々としていたが、あるコトをキッカケに波風が立ち、そして...。
【この後、思いっきりネタバレ】
『ぶあいそうな手紙』のラストシーン。
エルネストは、昔々から恋心を抱いていた、ウルグアイ時代の友人の奥さんの元へと向かい(友人はすでに鬼籍に入っている)、キレイさと上品さを保っている奥さんと抱きあってラスト。
彼がこんな行動力を得られたのも、23歳、ほぼほぼ孫くらいの年齢の女のコと、たまたま知りあったのがキッカケ。血の繋がった息子は、ほとんど頼りにならなかった。人間、最後の最後までわからないのにゃ😸
映画館の壁に貼ってあった紹介資料
つぶやき:原題は「エルネストの目」。日本語タイトル『ぶあいそうな手紙』は、エルネストがもともと書いていた手紙がぶあいそう、愛を伝え切れていなかった、素直じゃなかったとか、そういうところから来てるんだと思うけど、もうちょいそそられるタイトルがよかったかなぁ。