この作品は狙って観たのではなくて、たまたま空いてた日程にはまったから。そして素晴らしい映画体験が待っていた。
若くして医者に嫁いだお母さんのパワーがすごい。ほとんど子供なのに花嫁になり、イランからアメリカへ。ほどなくイスラム革命が起き、帰国できなくなるわ、旦那は倒れるわで、お母さんは9人の子供を育てるために、高卒資格を取り、不動産営業の道に入る。移民専門の敏腕不動産エージェントとなった母は、売って売って売りまくる。
一方、主人公の娘は、LGBTなのにひょんなコトからまさかの妊娠。限りないすったもんだの果てに待っていたものは?!
【ペルシアン・バージョン】|第36回東京国際映画祭(2023)
上映後、Q&Aで監督のマリアム・ケシャヴァルズ登場。「この映画をアメリカで作ることができたのは奇跡」「アメリカではイラン人はみんなテロリストだと思われている」「母からは家族の物語を映画にしてはいけないと言われていた。なぜなら恥だから。でも父と祖母が亡くなって母が長老になり、ようやくお許しが出た」など、興味深い発言がたくさん。
この映画のことを思い出すと、エネルギッシュな移民パワーににんまりしてしまう。一方、アメリカとイラン、歴史の狭間で翻弄された一家を思うとウルッと来たりもする。ただ、この一家、大黒柱のお母さんをはじめ、みんなユーモアに溢れている。
あたしは言える立場じゃないんだけど、この映画は「笑ってる場合ですよ」。笑っちゃいけないのかもしれないけど、笑っちゃっていいのかもしれない。
インド映画のように、突然、踊り出すのもお約束。その時に流れる曲はシンディ・ローパーの "Girls Just Want To Have Fun"。このタイトルには、万感の思いが込められているんだろう...と想像した。
ぜひ!一般公開してほしい。
2023/10/27 @TOHOシネマズ シャンテ