1話めは熱帯アマゾン、2話めは都会、3話めがアンデスの山岳部を舞台に、女性たちの日常生活を淡々と描いていく。
淡々とは言いつつも、スクリーンにアマゾンが映し出されると、まるで自分がそこにいるかのように、光る汗の匂いと高い湿度に包まれているようなリアリティがある。
3話めのアンデスを舞台にした物語が一番印象に残った。コンドルが飛んでいくような、高地に暮らす「母」。2人の子供たちは家を出て、都会で暮らしている。(クスコを思い出させる)町に行き、娘と電話で話すのが楽しみだが、母の家にはテレビも電話もない。現金収入は娘からの仕送りと、手作りのニットを町で売って得られるお金だけ。普段は畑を耕し、薪を拾い、じゃがいもを食べている。
多くは持っていないが、静かに平和に暮らしていた母のもとに、疎遠になっていた息子が帰ってくる...。
【この後 ネタバレ】
今年(2022年) 3月には大阪でペルー映画祭が開催される予定です。
Filmfestival | ペルー映画祭2021 | 東京都
息子は刑務所に入っていたが、模範囚だったので早めに出所。なぜ突然帰ってきたのかは語らないが母は息子を歓迎し、息子も母の手伝いをして、束の間の平穏な日々が訪れる。
しかし息子は、ある日突然、母のなけなしの現金を盗み、姿を消してしまう。娘と電話で話しても、息子がやったことは口にしない。そして母はいつもの日常に戻っていくのだ。
【この映画を観終わって個人的な感想】
クスコに行ったとき、路上で野菜やアンデス的手作りグッズを売っているセニョーラたちが、たくさんいた。映画はフィクションだろうが、背景を垣間見る思い。村に残らない子供が大半だろう。残された親たちは昔ながらの生活を営みながら、現金収入を得るため、子供と電話で話すために町へ行く。セニョーラたちに売り込まれた時、もっといろんなものを買っておけばよかった...。
日本人の根底には「がんばれば夢はかなう」という概念?!があるように思う。それは鎖国→明治維新→開国後に、がんばって発展したこともあるだろうし、第二次世界大戦後、焼け野原からものすごくがんばって、世界第二の大国に上り詰めた、そういう全国民的な成功体験がある気がする(今後はわからないけど)。
でもペルーは、なかなかそうはいかない。母の表情に「何かをしたとしてもうまくいくとは限らない」というような「あきらめ」が浮かんでいるように見えてしまった。
右往左往することなく、ジタバタすることもなく、息子を責めず、現実を受け入れる母の姿は、カッコいいと思うのだ。
ペルーに行ったときの旅行記 60日間のラテンな旅行体験記インデックス
話変わって、K'sシネマのロビーに置いてあった写真。拡大すると「昭和館」の文字が!かつてここには、ヤクザ映画と成人映画専門館があった。遠い遠い昭和のお話でした。
2021/12月 @K'sシネマ