渋谷のル・シネマで、ヴィム・ヴェンダースの大特集が開催されていると知り、行ってきた。
ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティブ ROAD MOVIES/夢の涯てまでも | ル・シネマ | Bunkamura
そんなに混んでいないだろうと、タカをくくりつつも1時間前に到着したら「あと14席です」と、受付の女性に冷静に言われた。
「2021年にヴィム・ヴェンダースがそんなに人気?!」と、内心ビックリ、当然、完売。
(どうでもいい話) 長〜いこと、邦題も『パリス、テキサス』だと思いこんでいた。そのほうがゴロもいいし。
場内に入ると、静かな熱気が漂っている。1席空けるのではなく、完全なる満席。隣りはファッション業界勤務?!20代らしきオシャレな若者。
昔、観たはずなのに、ナスターシャ・キンスキーのあのシーンと、ライ・クーダーのあのギターと、乾いた砂漠以外はまったく覚えてなかった。弟の存在も、何もかも。この映画が日本で公開されたのは(ウィキペディアによると)1985年9月。
バブル期にレンタルビデオで観た気がする。ストーリーを覚えていないということは寝落ちしまくったのかも。
にもかかわらず、この映画はあたしの中で伝説であり続けた。それは世界観なんだと思う。背景、あらすじ、動機...すべてを超越して衝撃的に存在したのが、ナスターシャ・キンスキー演じる覗き部屋の女だったのかもしれない。
全篇148分、世界観とともに旅に出る。
【このあとネタバレ】
【ここからネタバレ】
長い年月を経て再び観てもわからないことだらけ。現代にはネタバレ記事がネット上にいくらでもあるので、それらをあれこれ読んでみても。
例えば主人公のトラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン) が、娘くらいの年齢の奥さんと生まれたばかりの息子を置き去りにして、突然、失踪してしまう動機がよくわからん。
ラストシーンで、母であるナスターシャ・キンスキーと息子がホテルの部屋で再会する。トラヴィスはホテルの外から再会の様子を確認し、クルマで走り去るんだけど、こういう終わり方も何だかな...って感じ。
せっかく会えたんだから3人で暮らせばいいような気もするし、そもそも不在の間、せっせとトラヴィスの息子を育てた、トラヴィスの弟夫婦の気持ちとか、立場はどうなるんだ?!とも思った。
そう言い出したら、トラヴィスが失踪しなければ物語は始まらないし、映画の導入部分で手ぶらの彼が砂漠を彷徨い、ガソリンスタンドで気絶するなんて展開にはならないわけだ。
十分に大人になり、理屈っぽくなったあたしは改めて思う。すべては世界観。
それにしても、隣りに座ったとっても渋谷っぽい男のコ、この映画を観て、どんな感想を持ったんだろう?
2021/11/25 @ル・シネマ