山下達郎ライブ 超プレミアムなアコースティック@新宿ロフト

「よく当たりましたね」

その夜、ステージに登場した彼は、開口一番、客席に向かって言った。

「ここ新宿ロフトは、スタンディングなら500人のキャパ。今回のライブは椅子席を入れたので、余裕を持って225人に設定しました。つまり2日間で450人。eplusへの応募は3万組あったそうですよ。(一人2枚までなので最大)6万人。100倍以上の倍率です。おめでとうございます」

 

ある日、eplusから「 山下達郎】新宿LOFT公演 カード決済限定抽選受付のご案内」というメールが届き、なんと!彼がライブハウスで歌うという。

 

ホール公演でさえハズれていたので、当たるとは思わなかったけど、とりあえず申し込み、忘れてたら、「チケットをご用意いたしました」という淡々としたメールが!

 

 

何度も読み直してみたけど、何度も見ても当選。何度も読んでるうちに、心臓がドキドキしてきた。

 

入場待ちの間、隣りに並んでた女性も「当たると思わなかった」って言ってた。忘れてるほうが当たるのにゃ。当たるってわかってたら、誰かに声をかけたのに。もったいない気持ちがこみ上げたのは、当たってから。一人で来ている人が多い印象だったな。みんな当たると思わないから、とりあえず自分だけ応募するパターンが多かったのかも。

 

普通、ライブの入場時は「整理番号50番から60番の方、お待たせしました」ってな感じで、10番か、せいぜい5番ごとに呼ばれるけど、今回は1番ずつ。特別にお呼ばれしたような、プレミアム感が増していく。

 

並んでいる間話し相手だった女性が「行ってきま~す♪」と勢いよく去ってしまうと、歌舞伎町のハズレの路上で、123番を待つ。あたりの風景は、こんな感じ。

 

 

「このビル、新宿ロフト以外のテナントは、すべてホストクラブ」って、達郎がMCで言ってたっけ。

 

 

 

 

 

 

普段のライブは10人編成だそうだけど、今回は達郎のギター、ベース、ピアノの3人。

 

で、椅子席は、これぞホンマもんのかぶりつき。最前列だと、達郎との距離は2m前後か。

 

「椅子席の方々、硬いですね~。リラックスしてくださいね」。

 

と彼は何度か声をかけてたけど、ツバ直撃の至近距離。そりゃ固まるわ。

 

1曲めは知らない曲だった。

2曲めは "Paper Doll"

この曲、高校生のころ、よく聴いたな。バイト先の友達からレコードを借りて。

あのころから今までが、どわーっと、怒涛のように駆けめぐる。遠い昔の歌が、2016年に目の前で演奏されているフシギ

 

彼いわく「なーんだ、普通の構成だよね~と言われることもなく、知らない曲ばっかりだと言われることもないような、マニアにも万人にも受け入れられる選曲にした。なおかつ3人で演奏してサマになる曲(様々な試行錯誤、3人演奏に向く曲、向かない曲について、達郎節炸裂!トーク続く、続く)」。

 

涙が出たのは、アカペラ・コーナーで "So Much In Love" を歌ったとき。心底聴きたかった曲。

 

「このくらいの広さならいけるだろ」と言いつつ、マイクなしのアカペラを披露したり、カラオケで新曲"Cheer Up! The Summer" "硝子の少年"を歌ったり、何が飛び出すかわからないオモチャ箱状態。

 

そう、決して事前に詳しいブログを読んではいけないのにゃ。

 

あたしは万人ウケ派なので、"Bomber"とか"Ride On Time"は、うれしかった。"クリスマス・イブ"も。

 

まあ、歌もすごいけど、トークもすごい。ときどきボヤキながら、語る、語る。ロフトの社長との出会い、社長の政治的信条、達郎の政治観、もちろん音楽関連もたくさん。「ツイッターで呟かないでね」とか、はさみつつ。

 

彼が何度も繰り返していたのは、「ロフトはボクの音楽のゆりかご」という表現。そういえば、シュガー・ベイブの解散コンサートの舞台となったのは、荻窪ロフトだった!

 

「ボクはサブカルの出身。運よくミュージシャンとして成功したけど、うまくいかなかったらライブハウスのスタッフになっていたかも」

 

「昨日は『佐渡おけさ やって~』とか『いい顔してるね~』とか言ってくる人がいて、今晩のほうが気持ちよく歌えた」

 

「何万人もの観客を前にしてライブを成功させる人が、100人を前にしてうまく自分を表現できるとは限らない。一番むずかしいのは、一対一のコミュニケーション。例えば太鼓持ちの芸はすばらしいけれど、観客が少な過ぎて音楽の歴史に残らない」

 

「(クリスマス・イブしかヒット曲がない)一発屋の流行歌手だと思っている人もいる」

 

「お陰様でよく声が出ているから、声が正面に当たって跳ね返ってくるくらい。でもいつ声が出なくなるか、ボクたちくらいの世代のミュージシャンは、みんな心の奥では不安に思ってる。あの人だって(矢沢永吉のポーズか?!)同じ。だから、身体に気をつけて、人生を楽しみましょう」

 

最前列が背の高い男性で、首の動きによって、見えつ隠れつ。いつものライブハウスの風景だけど、垣間見えるのは山下達郎で、彼の声が聞こえてくるフシギモーゼの十戒のように、突然視界が開けたり。

 

ライブが正味3時間、入場待ち、ライブ開始待ちも含めると計4時間立ちっぱなし!終わって、松屋でハンバーグ定食はしっかり食べたけど、家に着いたら全身脱力。

 

伝説のライブハウス新宿ロフトだって、今となっちゃ場内禁煙。開演前「お煙草をお吸いの方は喫煙所でお願いします」と、気弱な若者の声が聞こえてくると、時代は変わったなぁと思う。でも変わらない確かなものも、受け継がれていくんだと、確信した夜でした。骨太に。

 

(敬称略)

 

追記: 録音したわけじゃないので(^^;;彼のコメントは大意です。

 

2016/10/04 @新宿ロフト