1曲めを歌い終えると、水を飲み、「すいませんね〜、マイペースで」と、付け加えた。水分補給は大切だけど、水を飲んだ理由が他にもあるのでは?と思ったのは、だいぶ時間が経ってからだ。
「ツアーは6年ぶりなんですよ。本当にお客さんが来てくれるか心配だった」
「横浜に引き続き、東京も完売しました。完売ですよ、完売」
2階席まで、通路をくまなく歩いて「ありがとう」「ありがとうございます」を繰り返しながら、彼女は感謝を伝えながらホール中を歩きまわった。心の底から感謝を伝えたかったんだ...ということが、じんわり伝わってきた。
「あたしもう49歳なんですよ。みんなだって同じくらいの年齢になりましたよね」(と言いながら、客席を見まわす)。
「詐欺結婚にあって、全部持っていかれてちゃったんですよね。キャバクラで働くとか(隣りの席の男性が「それはムリだよ」と呟いた)、銀座でママやればいいようなもんだけど(前述の隣りの男性が「それならいける」と力強く同意)、あたしは貫きたい。歌を歌っていきたい。息子が20歳になるまでは、生きます、がんばります」
なかのZERO大ホールは、1,292席。彼女がこう言い切った時、ホールにいた全員が、朋ちゃん応援団を結成したような、そんな一体感を感じた。
本当に今までいろんなコトがあったけれど、自分で事務所を作り、社長になった。今はオフィス華原の代表取締役社長で、パソコンも操っているという。
「あたしが社長ですよ。信じられます? PDFってあるじゃないですか。あれって、Performance Dance なんとかの略かと思ったら、実際、何の略なんですか?」
相変わらず、昔と同じ喋り方。だけど、朋ちゃんはいろんなことがあって、経験して、大人になった。確かに、昔ほどは高音も伸びやキレがないかもしれない。それでも歌って生きて行こう!と決めた朋ちゃんを、心から応援したいと思った。
そういえば、客席とのやり取りで、新曲は出さないんですか?って質問があった。
「小室さんともう一度組むって、みなさん、どう思いますか?」
一瞬、客席は静まり返ったが、よくよく考えたら、それもありだよね。すっかり大人になった二人が、改めてタッグを組んで新曲を出す...。なんてロマンチックなんだろう。
一番好きな "LOVE IS ALL MUSIC" も、歌ってくれた。ずーっとこの曲をリピートしながら、帰った。まるで90年代に戻ったかのように。
華原朋美 公式X https://x.com/kahalatomomi_tk?s=21&t=y6gxOaULYwYUBc7RJv5EiA
(一部敬称略)
2023/12/06 @なかのZERO大ホール