【映画】ヴェラは海の夢を見る Vera Dreams Of The Sea 第34回(2021)東京国際映画祭で見事グランプリを受賞した コソボの女性監督作品 大オススメ!

 映画祭で上映された作品は、一般公開に至らないことも多いので、見逃したらそれっきり、ということがよくある。

 コロナ禍真っ盛りの2021年、この作品が東京国際映画祭のグランプリを受賞したというニュースを聞いて、観たい!と思ったが、時すでに遅し。地味(め)な映画なので、一般公開は期待できないし。そしたらある時、映画配信サービス「JAIHO」の配信中一覧に載っていた。JAIHOは、見逃したマニアック系な作品が、ザクザク。

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 概要とストーリーは、こんな感じ。

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 キーワードのひとつは、男尊女卑。

 例えば、こんなセリフが出てくる。

「娘が家を相続するなど この村じゃ ありえない」

 ヴェラの娘 サラ が、ヴェラに向かって言う。

「私に何を教えてくれたわけ?料理、掃除、洗濯、アイロンがけ、口はつぐめ、世間体を守れ、黙っていれば殴られない、何も言うな 常に立場をわきまえろ、勉強しろ ただし 賢くなりすぎず ほどほどに」。

 ヴェラはクルマ(フォルクスワーゲン) を運転するし、電話はすべてスマホ。そんなについていけていないタイプじゃないと思う。ヴェラには背景があるんだよね。

 途上国だけではなく、現在の日本でも特に高齢者は、男尊女卑の傾向が強いよう。しかも、女性の意識の中に「男性を立てる」ことが、確固として存在していることも多い。

  画面に色がない。ヴェラが着ているグレーの服、街の風景、テレビのニュース画面...。でもたまにヴェラが色がある服を着ると、なんだかみょ〜にホッとする。

 

 ベルリンの壁が崩れた2年後に訪れた、プラハの民宿を思い出した。質素な団地の一室を、観光客のために間貸ししていた。家主のおばさんは、英語が喋れず(チェコ語とドイツ語)、コトバの会話はなかったけど、温かく、誠実な人柄という印象。部屋には、素朴な置き物が置かれていたっけ。しばし、思い出に浸るの巻。

 この映画を観るまで、コソボといういう国について、考えたことはなかった。ちょっと検索すると、独立し、コソボ共和国となったが、セルビアやその友好国は認めていないとか、面積は岐阜県と同じくらい...など、いろいろ出てくる。

 トルコでよく飲んだ小さなガラスのコップに入った、チャイのような飲み物でもてなしたり、アラブ圏的旋律の歌がクルマのラジオから流れたり、旧東欧的だったり、アラブ的だったり、相当にエキゾチック。

 あと、登場人物たちがみんなよくタバコを吸うんだよね。懐かしい映画の風景。

 主人公がレストランにいるシーンで、まわりの若者たちが歌っていた歌詞が印象的。

「 哀れなのは若かった頃を 悲しい気持ちで思い出す者」

 

 この作品は、数か月のインターバルを空けて、JAIHOで2回観た。その数か月の間にいろんなコトがあったせいか、2回めに観たときには「男尊女卑」が強く印象に残った。古くて新しいのかもしれない概念。途上国だけじゃなくて、日本でも高齢者の多くが、当たり前のように持っている価値観。いや、本当に高齢者だけ? 

 コソボ共和国の人口は、外務省のサイトによると179万人。

コソボ基礎データ|外務省

 アルバニア北マケドニアとコラボして、資金を集め、映画を作り、東京国際映画祭でグランプリを受賞する。そして、観る人に「考える機会」をくれる。こういうポジティブな循環が、愛おしい。

 嬉しかったのが、エンドロールに登場した、トヨタのマーク。

 

 コロナ禍でややこしいことが多かったけど、オンラインが一気に進んだのはありがたかった。だからこうして、監督のインタビューがYouTubeで観られる。備忘録として、メモを載せておきますが、配信で映画を観たら、このインタビューも観ることをお薦めします。

カルトリナ・クラスニチ(監督)『ヴェラは海の夢を見る』TIFF TALK SALON Kaltrina Krasniqi (Director) ”Vera Dreams of the Sea” - YouTube

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監督:カルトリナ・クラスニチ Kaltrina Krasniqi

【備忘録メモ】

1980年代

 監督の母は離婚し、土地の権利について4年間に渡って争ったが、完全に敗訴した。今のコソボでも、昔と同じような社会的、経済的に淵に追いやられているのではないか。

コソボでの話ではあるが、グローバルな問題ではないか。

 手話は、声を持たない人々の代表。

 主人公のキャスティングには1年間時間がかかった。女優さん (テウタ・アイディニ・イェゲニ) は劇場での仕事が多く、映画経験が少なかった。

 ヴェラは自分の戦いに勝つことはできなかったが、でも女性として勝つことが重要なのではなく、家族への愛を再認識することができた。それがラストシーンでの笑顔に結びついている。

Q:海は何かのメタファーになっているのか?

ヴェラはアルバニア語で夏という意味。コソボは陸の国。コソボ人であるヴェラにとって、海はロマンチックで、平和、静けさ、希望といった意味を持つ。しかし、夫の自殺によって消えてしまった。

 同時に水が持つ意味もある。窒息してしまうような波に、時々襲われるが、最終的には海で微笑みを浮かべるシーンに繋がる。

 娘 サラ のキャラは、大変重要な位置を占める。

 コソボはいつも予算が小さい。ヨーロッパでは国や州が制作費を出すことが多い。北マケドニアアルバニアとのコラボはとても自然なこと。文化的、政治的に同じトピックを共有している。アルバニアで海のシーンも撮れた。

 この作品はコソボでは2022年1月に上映される予定。社会が変化する中で、コソボの女性たちに問いかけるような作品と捉えている。が、先ほども話したように、コソボだけが抱えている問題ではない。

Q:画面が全体的に薄暗い色なのは、どんな意味があるのか?

 いい質問ですね!

首都プリシュティナは色としては灰色。ヴェラが住んでいるアパートは1970年代に建てられたもの。当時の人々の生活をより本物に近づけるために努力した。街がどんなに発展しても、彼女のアパートは昔のまま。60代前半の主人公たちは様々な色は持っていなくても、多様な側面を持っていることは事実だと思う。

 東京国際映画祭で上映されて本当に光栄。東京に来れなくてとっても残念だけど、また機会があればぜひ行きたい。

 

 

長文を読んでいただき、ありがとうございました。興味があれば、ぜひ、この映画を観てみてくださいにゃ😸

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【この後ネタバレ メモ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスリ・ハジリ判事が停職となりました

流出動画によって

故ファトミル・ガシ判事および

身元不明の男数人との賭博行為が明らかに

新高速道路も絡んでいました

この件の捜査開始について

当局はまだコメントしていません

 

海辺で戯れるヴェラ、娘、孫、娘の未来の旦那

リゾートというより、古典的な海水浴場