高校3年の夏、Keith Richardsの "The Harder They Come" を知った。暑い夏だった。どわーんと響くゆるいリズム、うねうねと地を這うようなベース、ハズれる寸前 後ノリのドラム、乾いたギターの音色、キースの気だるいボーカル...。ジミー・クリフとは全然別物だった。カセットに録音したけど、レコードが欲しくて、長年に渡って探し続けた。が、巡り会えないまま迎えた2020年。
ある日、ふとこの曲を思い出し、Amazonのサブスク(amazon music UNLIMITED) で探してみたら、ありました。今は聞きたいときにいつでも聞けるし、昔々のカセットに比べたら、音も格段にいい。
でも...と、あたしは思う。好きな曲がなんでも、いつでも聞けちゃうなんて、なんてつまらない世界なんだろう。手に入らない何かを追いかける楽しみ、見つけたときの至福、充実感、入手できてもできなくても、手に入れようとする過程で生まれる思い出...。そこには、ありがたみ、慈しみ、愛おしさ、手ごたえがある。こんな言葉も、近々死語か。
お小遣いを握りしめてお店に行き、レコードやCDを買う。ハズれることもある。好きになろうとして、何度も聞いたり、惹かれる曲を見つけたり。1曲への思い入れは、海のように深い。
でも...と、再び思う。時代は変化し、文明は凄まじく進化している。昔話は思い出としてしっかり抱きしめつつ、便利さは享受すればいいのではないか? ITとAIが強烈な勢いで台頭する現在は、ある意味、産業革命状態。
そう、こんな新しい曲も、ラジオから流れてすぐダウンロードできるし。
昔だったら、スペインに行かなくちゃ買えないようなこんなアルバムも。
サブスクでダウンロードしたすべての曲をシャッフルすると、大げさに言えば、あたしのミュージック・ヒストリーがランダムに流れてくる。例えば、m-flo→1980年代のテクノ→Sin Lizzy→サルサ→トリニダード・トバゴの曲→恋のフーガ→八代亜紀→藤井風...とか。
ユーミンのライブのセットリストをプレイリスト化したら、しばらくスルメみたいに楽しめた。聞き流していた曲の魅力も再発見!
amazon music UNLIMITEDは、6500万曲が聴き放題でプライム会員なら月額780円。モノの値段って、どうなっちゃったんでしょ。あたしが子供の頃でもレコード1枚2000円くらいしたのに。Amazonの回し者ではありません。これが時代の大変化なのでした。