高校が下高井戸だったせいか、下高井戸に来ると、散歩したくなる。 特に世田谷線。昔々は、芋虫みたいな緑色の電車が走っていて「 イモ電」とか、呼ばれていたっけ。
ちょっと時間があったので、線路沿いを歩くと、見事な咲きっぷりの花が並んでいた。手をかけ、 愛情をこめて育てていることが、立ち姿を見ると伝わってくる。
その脇にこんな紙が貼ってあった。年配の方の字だろう。人生はどこまでも、果てなく深い。
映画館のロビーには、山田洋次監督の色紙があった。
飲み物を購入し「さぁ、観るぞ~!」と意気込んで、席に座った。 多分、意気込んだのがいけなかったんだろう。 映画が始まってすぐ、 まだまったく飲んでいないペットボトルを床に落とした。 なだらかに傾斜している映画館の床を、 ペットボトルは前方にゆっくりと転がっていったようだ。
映画館の暗闇の中で、しばらくペットボトルのことを考えていた。 前の列を見てみればあるかもしれない。でも、もしなかったら.. .。いろいろ考え、結局、あきらめた。あきらめた途端、睡魔の沼から何十本もの手が出てきて、引きづりこまれた。
監督はウェス・アンダーソン。『グランド・ブダペスト・ホテル』 もそうだったけど、とにかく展開が速い。 聞くだけでちゃーんと英語が理解できればいいけど、 字幕を見ながら画面を観てると、追いつけない。この作品は「ネタバレ」くらいの勢いで、予習してから観て、 アンダーソン監督の独自の世界観に浸るほうが、 映画とともに幸せな時間が過ごせそう。
ちなみに、映画が終わってから前の列を見たら、落としたペットボトルが救助を待ってました。
フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊|映画/ブルーレイ・デジタル配信|20世紀スタジオ公式
映画館を出て、 また吸い寄せられるように世田谷線の線路方面に歩いていくと、たい焼きを売っていた。イート・インもできたので、 中で食べることにした。
ま、寝ちゃったとはいえ、 咲き誇るタチアオイを見つけ、山田洋次監督のありがたい言葉を読んで、おいしいたい焼きを食べることができ、思い出をつくっていく。だから、 やっぱりときどき映画館に行きたいと思う。
2022/6月 @下高井戸シネマ