終わりと始まり

1社から複数の受注をもらうことを身上としていたころ。受注して仲よくなったのに、ある時、突然、担当者不在が続き、話ができなくなった会社があった。もしや居留守では?と思い、直接訪問。

曇りの日、ひと気のないオフィス、うず高く積まれた書類の山、その奥に人がいた。とてつもなく長い距離があったような気がしたけど、ほんの数メートルだったと思う。

「○○と申しますが、□□さんはいらっしゃいますか?」
「□□は、辞めました」
「後任の方は?」
「後任はいませんよ。もう従業員はいません。私が社長ですが、会社を清算してるんです」

一瞬、言葉が見つからなかったが「次の事業のご参考に」と言いつつ、当時売れ筋だったサービスのパンフレットを渡して、帰ってきた。
受け取ってくれたけど、残酷なことをしたとも思う。

もうひとつ、忘れられない会社。

紹介で受注して、何から何まで申し込んでもらった新規立ち上げの会社。でも長くは続かなかった。

「解散することになりました」

今ほどメールの割合が高くなかった時代、その人は、電話で言った。

それから五月雨式に、丁寧に記入された解約申込書が届いた。最後の解約申込書の処理を確認すると、彼は言った。

「今度は私がいなくなります」

思い出すたび、じんわりこみ上げるものがある。どんなかたちであるにしても、引き際、去り際は、大切。自分自身を今までを振り返り、反省もして、引き際はキレイにしようと思う。そうすれば、新しい次のこともすんなり始まっていくと思うから。
仕事は時に孤独なんだそう。ネコもたまに孤独を感じます。例え次の瞬間、ネコじゃらしに向かって爆走するにしても(ミッケ)