川崎

ほんの2か月ほど、川崎の港寄りの住宅地で、個人宅の飛び込み営業をやったことがある。1日100〜150件も飛び込みまくる。ヘヴィーというか、前時代的というか、自分でやっておいて言うのもなんだけど、ビミョーなお仕事でした。

比較的高齢化しているエリアだったこともあり、時間が十分にある方も多く、いろ〜んな話をしてくれた。借金の額から(これは断り文句ね、お金ないよっていう)、家庭内の事情、心のつぶやき、愚痴、エトセトラ、エトセトラ。

奥さんを亡くした70代半ばとおぼしき男性は、中国から来た女性と、まだ中学生くらいの彼女の息子と同居。第二の人生がいかにすばらしいか、熱をこめて語った。

「結婚していない」って言ったら「そりゃ、気が強くて、頑固ってことだ」と、いともあっさり返ってきた。ここまでハッキリ言った人はいなかったけど、当たってるわ。

港町、下町の開放的な気風もあるだろうし、行きずり、二度と会わないと思うから、言いたいことが言えるんだろう。

複雑な思いを詳しく話してくれた女性は、たまたま2度めに会ったとき、やや放心状態で言った。「何で、あんなこと話したのか、自分でもわからない」。

大丈夫、全部忘れました。

いろんな人がいろんなコトを話してくれるけど、全部抱えてたら重過ぎるもんね。

「誰か来たら、あげることにしてるのよ。宅急便のお兄さん、営業の人たち。頑張ってる人にあげてるの。はい、どうぞ!」と言われてもらった缶コーヒー。

うれしかったな。リポビタンも、もらった。リポビタンは飲んだけど、缶コーヒーは、今でも部屋に飾ってある。忘れちゃいけないことを、忘れないように。