【全体的にネタバレな内容を含んでいます】
シネマカリテでの上映は5/26(木)まで
その後 シネマ・ジャック&ベティ、あつぎのえいがかんkikiなどで上映予定
映画『リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス』『スージーQ』『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』公式ウェブサイト
『キャン・ザ・キャン』を初めて聞いた時は、子供ながら強烈な衝撃を受けた。1973年。女性シンガーはたくさんいても、女性ロッカーがいない時代。しかも"サディスティック・ロックの女王"とか、"陶酔のアイドル"なんて、キャッチフレーズまでついている。親は当然、こんな音楽を聞くなんて!と、お怒り。
Suzi Quatro - Can The Can - 1973 - Official Video Remastered - YouTube
今、聞いてもカッコいい。半世紀近く前の音とは思えない。
デトロイトに生まれ育ち、姉妹でバンド活動をしていた彼女が、ひとりロンドンへ向かい、レコード・デビューすることになった背景や、離婚のいきさつなど彼女の半生が、彼女自身と、彼女を知る人々、彼女に影響を受けたミュージシャン(主に女性) によって語られる。
出演するのはラナウェイズのシェリー・カーリー、ジョーン・ジェット、リタ・フォード、スイートのアンディ、ブロンディのデボラ・ハリー(デビー・ハリー)、トランスヴィジョン・ヴァンプのウェンディ・ジェームス、ゴーゴーズのキャシー、そしてアリス・クーパーなど。プリテンダースのクリッシー・ハインドは、ハグするシーンで登場。本流とは関係ないけど、ウェンディ・ジェームスが、魔女的イメージになってて、かなりビックリ。
イギリスではスレイドの前座(オープニング・アクトなんて言葉は、少なくとも日本では使われていなかった)を務め、アメリカではユーライア・ヒープやアリス・クーパーとツアーをまわったという。
イギリスでブレイク、ヨーロッパの国々でもヒットチャート上位に駆け上がった彼女、アメリカでは成功しなかったんだよね。ま、彼女だけじゃなくて、当時、グラム・ロックと呼ばれた、T.REX、スレイド、この映画には出て来なかったけどゲーリー・グリッターなどなど、イギリスで頂点を極めたバンドたちは、アメリカでは成功しなかった。
「早過ぎた」という証言が出てきた。確かに、アメリカは広大だし、保守的な人々も多い。ましてや、50年前だし。ただ彼女は、成功のバロメータと言われるローリング・ストーン紙の表紙にはなったんだそう。
Dr.Hook & The Medicine Show が "The Cover Of Rolling Stone" っていう歌をリリースし、ビルボードの6位に入ったのが、やはり1973年。
Dr Hook and the Medicine Show ~ "Cover of the Rolling Stone" - YouTube
話をスージー・クアトロに戻すと、最盛期の彼女は、72日間で65都市をツアーでまわったんだそう。若いからできたって言うけど、それにしたって凄すぎる。
映画のラスト近く、インタビュアが彼女に尋ねる。「もしドアを開けたら、子供のあなたが立っていたとしたら、何を伝えたいですか」。
彼女は考えてから、答える。「早く走り過ぎないで」。そして、こうも言った。「もっと両親と一緒にいたかった」。「掴んだ成功より、家族との絆」。イギリスに一人で渡ったのは、姉妹グループの中で、彼女だけがスカウトされたから。
日本のコマーシャル(大関) に出演したこと、日本で結婚式を挙げた時の様子なども出てきます。
スージー・クアトロはあたしにとっては一過性だったけど、その後の彼女の人生を知ることができて本当によかった。ミュージシャンの証言盛りだくさん、理解していない内容が多そうなので、もし配信されたらまた観たいにゃ。
オマケ:『エコー・イン・ザ・キャニオン』関連の展示品。こういう出会いがあるから、映画館に行きたいと思うんだにゃ。
2022/05/23 @シネマカリテ