天才の定義のひとつは、「この人がいたから音楽の世界観が変わった」。
「天才は誰?」と訊かれたら、パッと思い浮かぶ人がいるだろう。あたしにとって中村佳穂はそのひとり。
2019年10月、青山の草月ホールで初めて彼女の生演奏を観たとき「あぁ、天才の初めてホールツアーに立ち会うことができた!」と感じた。ライブが終わると、スタンディング・オベーション。詳しくは、当時のブログを見てみてくださいにゃ。
【ライブ】中村佳穂〜今年のナンバーワン・ライブ 新たなる天才の登場 - 検索よりも実体験 (^^) 食べる 観る 見る 波に乗る ネコはミッケ
そして2年ちょっと時は流れた。得手して天才は不遇だったりすることもあるが、彼女は違った。『竜とそばかすの姫』に声優として出演、劇中歌の歌唱も担当、2021年の大晦日には、なんと!紅白歌合戦にも登場した。そして、コロナ禍の東京国際フォーラムホールA公演。
東京で一番大きいホールでひとりライブ。ステージにはピアノと彼女だけ。天井に近い席だったけど、超ひさしぶりのライブ、生で音楽を聴く喜びにひたり、1曲めでじんわり涙が出てきた。中村佳穂は東京国際フォーラムホールAでも、自由奔放。ますます自由。自由である喜び。客席は「グループ・ディスタンス」方式で、同じグループの人々は隣り合わせ、ひとりだったら隣りは空席。
なぜピアノが2台?!と思っていたら、鮮やかなグリーンの衣装を着た上原ひろみが、転がるようにステージに飛びこんで来た。二人で連弾、奇跡のコラボ。
1月下旬に中村佳穂が思いつき、上原ひろみに声をかけたら、快諾してくれたとか。「『ひろみちゃんって、呼んでね』と言われたけど、緊張しててまだ一度も呼べていない」なんて、エピソードも披露。
上原ひろみは、いろんな世代のアーティストとたくさんコラボしている。以前、矢野顕子とのコラボ・ライブを観たけど、才能がぶつかりあいほとばしる、すごい迫力だったっけ。2005年のフジロック、ステラボール、矢野顕子コラボ、ブルーノートの配信も入れると今回で5回めのライブ。どんどん進化している。
中村佳穂自身も、ミレニアム・パレードやtofubeats、君島大空などなど積極的にコラボしている。これからのキーワードのひとつは、コラボ。相乗効果以上の予期せぬ化学反応がある。
"HANK"は、阪急の近くで作ったとか。そういえば彼女は京都出身。古くは沢田研二、都はるみ、最近では竹内アンナなど、気骨がある歌手が多い気がする京都出身。
「きっとね!」を演奏しなかったのはちょいと残念だったけど、もうこうなってくるとどの曲を演奏しても、すべて彼女の世界だから、彼女と同じ空間に居られただけでいいと思う。もしかすると、その感覚がライブの本質に近いのかな、と思ったりもする。コロナ禍で長いことライブを観る機会がなかったから、気づけたこと。
(敬称略)
2022/02/4 東京国際フォーラムホールA