【映画】『天国にちがいない』〜旅するパレスチナ系イスラエル人監督 ナザレからパリ そしてニューヨークへ コロナ前に撮影されたのにコロナに翻弄される今の世界を描いているよう

 

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f:id:megmikke:20210506005245j:image 映画『天国にちがいない』公式サイト

 監督自身が新作の企画を持って世界を彷徨う。ノマドのように。ニューヨークでは、友人のガエル・ガルシア・ベルナルに映画プロデューサーを紹介してもらうが、呆気なく却下されてしまう。

 映画全編で彼自身が喋るのは、たった二言。ニューヨークでタクシードライバーに「どこから来たんだ?」と、尋ねられた時だけ。

 英語、スペイン語、フランス語、アラビア語...。監督自身は喋らなくても、さまざまな人々が、彼に話しかける。さまざまな言語で話す風景が描かれる。

 そんなシーンの連なりを見ていたら、いろんな人が喋りかけてくることが、あたしにとっての旅でもあることに気づいた。パリでもニューヨークでも東京23区でも、どこでも。

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f:id:megmikke:20210328171230j:image 102分と短い作品だけど、壮大な世界旅行をしているような気分になってくる。ナザレは行ったことがないけれど、妙な既知感がある。昔、訪ねたどこかの町に似ているような。

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f:id:megmikke:20210506010901j:image 「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見ると喜劇であるー」。

 フライヤーに書いてあったこの一言が、この映画とあたしを結びつけた。日常の小さな出来事に否定的な気持ちになることも、いらつくこともあるけれど、遠くから見たら取るに足らないこと。

 コロナ前の作品なのに、コロナ禍に撮影されたように感じたのは、人が少なくて、空っぽなシーンが印象に残ったからかなぁ。この作品、どこかで出会ったら、観てみることをオススメします。


 映画が終わり、旅情に浸ったままお手洗いに行くと、団塊世代のおばさまに話しかけられた。

「こっちを押すとお湯が出るのよ」

「映画が好きでしょ? 何の映画を観てきたの?」

 『けったいな町医者』という医療の映画を勧められた。

「このお医者さん、尼崎に住んでるの。だからあたしも尼崎に移住しようと思うのよ。ひとりだし」

「あなただってそんなに若くないでしょ?」

「あたしはビールを飲んでいくけど.....」

 ズケズケ言いつつ、誘われた。この人と昼間っからビールを飲んだら、おもしろいコトになりそう。新宿ティップネスの閉館が近づいていたタイミングだったので、ご一緒しなかったけど。

 ウチでAmazon Prime Video をいくら観ても、こういう展開にはならない。だからできるだけ、今はコロナ禍だから節度を持って、外にはちびちび出たいと思う。

2021/02/23 新宿武蔵野館