1月24日、最終日。青山のスパイラルには、入場を待つ長い行列ができていた。外に30〜40人、中に入ってから更に20人くらい。没後40年なのに、並んでいるのは生前を知らない若い人ばかり(みんなちゃんとソーシャル・ディスタンスは保ってました)。
場内は写真撮影禁止だったから、目に焼き付けた。そういえば昔々は、スマホなんてなかったから、みんな目に焼き付けた。
一番印象的だったのは、留守電コーナー。受話器を取ると張りのある彼女の声が流れてくる。「向田でございます!」。あぁ、これが伝説の留守電か!親友だった黒柳徹子さんは、話が止まらなくなり、留守電を9回連続で吹き込んだとか。
黒柳徹子さんと言えば「徹子の部屋」に出演したVTRが、会場では見ることができた。亡くなる前の年の収録だったと思う。
あたしにとって「大人の女」だった向田邦子さんは、若く、はつらつと喋っていた。これが月日が流れるということなんだと。
ワープロもない時代。手書きの原稿の数々。これもまた伝説。達筆過ぎて読めない。そういえば「達筆」っていう言葉を使うのは、ひさしぶりだなぁ。文字を書くことが、めっきり減った今となっては。
すぐ近くなので、向田邦子さんが住んでいたマンションに行ってみることにした。青山通り沿い、この空地にはかつて「Nouveau」という雑貨屋さんがあった。
1980年代半ば、毎日通っていた路地。権兵ヱ は、閉店していた。
だるまや は、健在。
この四つ角には、ビストロ・ダルブル があった。お店の前に、生きているザリガニが置いてあったっけ。だいぶ前に移転したよう。
向田邦子さんが住んでいた南青山第一マンションズ。
建築計画のお知らせ。建て替えを予定しているらしい。着工予定は平成30年7月。
でもまだ、住んでいる人がいる気配。
「過去の自分が、今の自分を助けてくれる」とは、ユーミンの名言。引き合いに出すのはおこがましいけど、年齢を重ねて思うのは、過去の経験は、今の自分を豊かにしてくれるということ。若いとき、向田邦子さん作品という宝に触れた経験は、きっと、今とこれからのあたしが生きていくヒントをくれるだろう。改めて、Apple Booksで『父の詫び状』を購入し、読んでいる。
20代前半のころ、購入した文庫本。
そうか、この本を初めて読んだのは、ロサンゼルスだったんだ。その後も、何度か読んだ。そして、2021年。iPadで読んで、何と出会うだろう。
展覧会のフライヤー。イラストは今のあたしより遥かに若い向田邦子さん。彼女みたいになりたかったなぁ。
新春ドラマスペシャルのテーマ曲のタイトルが『過ぎ去りし日々』だということを、初めて知った。
2/27の正午から、テレビマンユニオンチャンネルで、本来スパイラルで公演予定だった3演目が、オンライン配信されるそう。じっくり観ようと思う。若いコたちが、なぜ向田邦子さんに惹かれるのか、ヒントが見つかるかもしれない。