映画「人生タクシー」

20年間映画製作禁止
20年間脚本執筆禁止
20年間海外旅行禁止
20年間インタビュー禁止

名匠アッバス・キアロスタミの愛弟子であり、世界三大映画祭(カンヌ、ヴェネチア、ベルリン)を制覇したイラン人映画監督ジャファル・パナヒ。しかし政府への反体制的な活動を理由に「20年間の映画監督禁止令」を受けてしまう🙀😱


ところがどっこい、パナヒ監督はあきらめない。この映画「人生タクシー」では、監督自身が乗り合いタクシー運転手に扮し、テヘランの街を走り回る。車載カメラに映し出されるのは、厳しい情報統制下にあるこの国でたくましく生きる人々の人生模様。



死刑制度を巡って激しい議論を交わす(自称)路上強盗と教師、成り上がりを目指す?!海賊版レンタルDVD屋、突然運び込まれる血だらけの男と妻、金魚鉢を抱えた二人の女性、政府から停職処分を受けた弁護士などなど。一見、つつましい普通の日常生活の中で、彼らは何を語るのか???

訪れたことのないテヘランの街は、想像していたよりずっと洗練されていた。ただ先進国の街並とはビミョーに違う。例えば南米の首都、ペルーのリマのミラ・フローレス(高級住宅街)を、タクシーで移動している感覚。旅している気分。

ラテンアメリカでは、タクシーに乗ると、よく助手席に座った。最初は「襲われやしないだろうか」なんて不安な気持ちもあった。でも慣れてくると、街の風景がリアルに迫ってくるし、ドライバーとの距離が縮まって、その国により親近感を抱くようになった。

この映画では、ダッシュボードに据え付けられたカメラが、車内外の人々と風景を捉える。それも充分に高品質な映像。

一番印象に残ったのは、赤いバラの花束を抱えて乗り込んで来る、政府から停職処分を受けても差別と闘う女性弁護士の清々しさ。

爽やかで、スッキリした表情。

あきらめないこと。意志を貫くこと。そしてユーモアを忘れないこと。この映画が教えてくれることは、たくさんある。


10年前だったら、この映画で描かれる世界は、遠い国の出来事。でも「共謀罪」が審議される今の日本では、他人事でも、遠い国の出来事でもなく、明日は我が身なのかもかも。

人生タクシー 予告編

オマケ:劇中で頻繁に「メルシー」ってフランス語を使うのが気になって調べてみたら、イランはフランスの植民地になったことはなく、流行語が定着したものだそう。日本だって、英米の植民地になったことはないけど、サンキューって言うもんね。下記リンク、とっても参考になりました。