八代亜紀 Bluesを唄う

スパンコールがキラキラ輝くロングドレスで登場した彼女、1曲めは "Saint Louis Blues"。そして B.B.King "The Thrill Is Gone"へと続く。
 
今さらながら、気づいた。アメリカのブルースも、演歌も、根っこは地球の土に生えている。そして、彼女は彼女の世界観で、シームレスに歌い、唄う。男衆を従えて。
予想外って言ったら失礼だけど、ビックリするほどカッコいい。例えば、バンドにカウントを出すときの指の動きとか。それはそれは年季もの、堂に入っている。
 
そう、今回のライブはすべてが想像を 超えていた。勢いでチケットを買ったものの、そんなに期待はしていなかったので、ぶっ飛んだ。ステキな展開の予感。
 
続いて、淡谷のり子「別れのブルース」、藤圭子「夢は夜ひらく」といった日本の昭和なブルース。このあたりは、もう彼女の真骨頂。ちょいと小噺を挿入してから唄う。
 
「18歳か19歳のころ、淡谷先生にお会いしたとき『あんた、キレイね』と言われ『はい』と答えた。若かったから」
 
書くと臨場感が絶対的に不足してしまうけれど、とにかくトークに味がある。
 
「東京は水不足なんだってね。そうよね?じゃあ、歌っちゃおうかな、あの曲」
 
で、流れてくるのは『雨の慕情』のイントロ。♪雨 雨 降れ降れもっと降れ♪
 
かと思えば、女子刑務所の慰問を35年続けているという話も。この世の中に生きているしあわせ。罪を犯す犯さないは紙一重、背中合わせ。なんて言われると、心に染みるんだにゃ。
 
今回のライブで歌った曲は、4分類。アメリカのスタンダードなブルース、昭和なブルース、新しくブルースにアレンジし直した自身のヒット曲、そして若い世代...中村中横山剣THE BAWDIESが書き下ろしたオリジナル曲。
 
とりわけ横山剣の「ネオンテトラ」は、圧巻! 高層マンションで暮らしていた仲のいい夫婦。しかし夫が突然亡くなってしまい、妻は水商売の世界へ。仕事が終わったあと、クルマの窓から見る、かつて住んでいたマンション...。
 
歌い終わっても、バックバンドの演奏は続く。ステージに立っているだけで、彼女の存在が、その後の物語を語っているようなフシギな体験。歌って魅せ、いるだけで魅せる。
 
 
中村中の「命のブルース」は児童虐待がテーマの重い内容。
 
彼女、性格は明るいけど、暗い歌が好きなんだろうな、と想像する。「次は暗〜い暗〜い歌です」と嬉しそうに、くっくっくと笑いながら、まるでドMのように曲紹介する。そして歌われるのは、涙なしでは聴けない、どっぷり深刻な歌。

キャラ的には天然ボケか。歌ってるときと、喋ってるときのギャップがすごい。

歌謡ショーは、ビシッと構成が決まっているので、アンコールがない。緞帳が降りたら、ショーはおしまいなんだそう。ライブハウスを楽しんでいる感満載!アンコールは3曲も歌ってくれちゃったりして。

今年は夏フェスにも出演予定。「ファインディング・ドリー」のエンディングテーマも歌い、歌手生活45年、新しいコトにどんどんチャレンジし続ける彼女。キーワードは、カッコいい!


 
 

2016.6.21.@品川ステラボール