映画『カセットテープ・ダイアリーズ』公式サイト/全国絶賛公開中!
当時、よく聴いていたイギリス音楽。人気者だったシンガーたち、カジャ・グー・グーのリマール風とか、バナナラマ風とか、主人公の同級生のファッションや、メークも懐かしくって、映画が始まるとすぐ物語に入りこんでいった。
1987年はあたしにとって、ものすごくたくさんの変化があった年。主人公たちとは若干世代が違うけど、映画のストーリーと、怒涛のように押し寄せてきた昔々の思い出が合流し、当時にタイムスリップしていた。
「ブルース・スプリングスティーン?! オヤジ世代の音楽じゃないか? 今は何年だと思ってるんだ?」なんてセリフが出てきたけれど、ブルースがデビューしたのは1970年代のアメリカ。地方都市とはいえ、他のイギリスの高校生@1987年には、古臭く、泥臭く感じられたんだろう。
が、パキスタン人の移民として、人種差別や、経済的成功を強く求める父親との軋轢を抱えている主人公の少年にとって、ブルースの音楽が生きる勇気を与えてくれたのだ!
実はあたし、ブルースの音楽は苦手だけど(°▽°) それでも十分楽しめました。
原題は Blinded By The Light (光で目もくらみ)。Manfred Man's Earth Bandのカバーが、全米トップ40でかかっていたことを思い出した。作者はブルースなんだそう。知らなかった!
ま、そんな「だからどうした?!」的原題?!に『カセットテープ・ダイアリーズ』という魅力的な邦題をつけたのは、すごいと思う。特に昭和世代にはカセットテープにも、日記にも思い入れがある人が多いだろう。手で文字を書きまくる彼の姿に、懐かしい昔を思い出したり。そう、SNSじゃなくて、日記なんだ!
好きだったのは、こんなシーン。
アメリカに行くチャンスを得た彼は、入国手続きで訪問の目的を訊かれる。「ボクはブルース・スプリングスティーンの大ファン。彼が生まれ育った町に行くんです」。そう答えた彼に入国管理官は、「そうか、ボス(ブルースの愛称) の町に行くのか。楽しんでこいよ」と言いながら、パスポートにスタンプを押す。
今みたいにスピード優先じゃなかったし、手続きもアナログだったから、昔は無駄話が多かった。でもムダじゃなくて、ちょっとしたすれ違いざまの会話は、思い出をたくさん残してくれたんだよね。
移民の息子が、父親に押し付けられたマネー・コンシャスな人生ではなく、自分が大好きな「書く」という行為で身を立て、有名ジャーナリストになり、回顧録まで出し、要するにサクセス・ストーリーでしょ?っていう見方もあると思う。オヤジの自慢話@居酒屋 がグローバルに展開して、イギリスで映画になったっていうか。
かなりストレートな展開とエンディングなので、何か「ヒネリ」が効いた映画が好きな派には、ちょいと合わないかも。でも、あたしはこういうベタな青春映画が、大好き!
首都圏でもまだまだ公開中だし、日本全国これから順次公開予定。お近くで上映されているのを見つけたら、ぜひ!(2020/08/10現在)