新宿K'sシネマにて開催中の「ラテン!ラテン!ラテン!」。比嘉さんが代表を務めるAction inc.が、この10年間に配給したラテンな映画たちを、一挙大公開!
Action inc.配給作品は、全部観た!くらいの勢いだったけど、見逃した作品もけっこうあり、今回は旧作2本、新作1本を観てきた。
ところで最近、特に、旧作と一言で片付けてしまうことに、とても抵抗を感じる。
昨年1年間に日本で公開された作品は、邦画洋画合わせて、なんと!1184本(映連サイトによる)
大ヒットする映画は、大資本やハリウッド絡みのほんの一握り。すばらしいのに、うねりに飲みこまれてしまう作品がなんて多いことか!
そんな中での配給作品一挙公開イベント! しかも今の日本が抱える問題と深くリンクする新作も公開。これって、すごいことだと思う。
3回行ったけど、会場はいつも大盛況!
ってなわけで、やった!「ラテン!ラテン!ラテン!」5/15までの上映予定だったのが、アンコール上映決定したそうです。
新作『スリーピング・ボイス〜沈黙の叫び〜』も、モーニングロードショーで大絶賛上映中。
では、3作品について、語ります。
◾︎スリーピング・ボイス〜沈黙の叫び〜
あらすじを読んだとき、浮かれ気分のゴールデンウイークには、ちと重そうでためらった。でも、配給した比嘉さんは、いつにない入れ込みよう。比嘉さんがそこまで言うのなら!と思って見に行ったら、とんでもなく衝撃的な作品だった。
スペイン内戦が終結して2年めのマドリード、女性刑務所が舞台。共和国派(反フランコ)の収監された姉と、姉を助けようとする敬虔なクリスチャンの妹を中心に当時の社会を描く物語。
内容は、想像以上に壮絶。内戦が終わっても、両派には禍根が残り、フランコ政権は共和国派を根絶すべく、容赦ない死刑を執行し続ける。
同じ考えを持つことを強要され、やり直しが許されない。
GWだから『シンデレラ』とか楽しい映画が見たい。スペイン内戦なんてよくわからない。怖い映画は苦手。
なるほど、ごもっとも!
ただ、この映画は昔々の遠い国のお話じゃなくて、今の日本に忍び寄って来ている「危機」なのかも。
「ごっつ盛り塩焼きそば」がおいしく食べられるのも、波乗りができるのも、日本が平和だから。
過去の些細な経歴や、夫の思想が理由で、生きたくても生きられない。抑えても抑えても泣けて泣けて、まわりに人がいなかったら、号泣していただろうな。遠慮しつつため息をつき、鼻水をすすった。
ずーっと平和が当たり前ではなくなるかもしれない今、こういう映画が日本で一般公開されるって、とっても意味があると思う。
◾︎地中海式 人生のレシピ
ケネディ暗殺の日に生まれた、天才的な料理の才能を持つ、運命の女性ソフィア。バルセロナの小さな港町で、性格が全く異なる二人の男友達と共に成長、子宝に恵まれた上に、伝説のシェフとなる!
子供たちの父親は誰なのか? 実は男性二人が愛しあっているのでは? 奔放な三角関係を続ける三人に、時に世間の目は冷たいが...。
一言で言えば「何でもあり」なストーリー。でも「何でもあり」は、ありとあらゆる可能性があるってことかも。
二人のオトコたちを翻弄し続けるソフィアは、言う。「大切なのは、探し続けること」。
気が済むまで探し続けることって大切だなぁ、最近の心境にピッタリあった。
やってみなくちゃわからない。映画だって観てみなくちゃわからない。こんなにいい映画に出会えるなんて!
あの!「エル・ブリ」のシェフなどが全面協力したという料理の数々も見事。
見終わった後、カラダが軽く、かろやかになった気がする映画だった。
◾︎永遠のハバナ
ラテンのリズムで踊りまくる明るい人々。そんなステレオタイプのキューバから遠く離れたところで、市井の人々の生活を淡々と、暖かく身守るようなドキュメンタリー映画。ラストシーンを除くと、ナレーションもセリフもない。監督によると「言葉より、映像の方がウソをつかないから」だとか。
ラテン的な?どアップもありつつ、小津安二郎に通じる静謐さを感じたりして。
あたしは絡まりまくる人間模様が好きで、どちらかというとドキュメンタリーは苦手。でもこういう比較的マニアックな作品が日本で一般公開され、いろんな映画が観られる文化と自由度があるって、しあわせ。
派手さはなくても、上質な映画を買って、配給し続けている比嘉さんは、改めてすごいなぁと思う。