30本の手で引っ張られるようなキョーレツな眠気


ある朝、個人宅受注を目指し住宅街に向かう電車に乗ると、目の前に同僚が。喋らないのも気まずいので、訊いてみた。

「どちらに行かれるんですか?」

「家に帰るんです」

いったん出社し、朝礼後「行ってきます!」と外回りに出掛けるかのように飛び出し、家に帰るってパターン。

言わなきゃいいのに。
正直なのか、観念したのか、どうでもいいと思ったのか、もうすでに辞める気だったのか。

いにしえ営業マンの客先以外の行き先ベスト3は、パチンコ、散髪、ポルノ映画(もうポルノ映画館は壊滅状態だけど)。面と向かって言わないにしても、家に帰ってた人はけっこういた。定期があれば、お金もかからないし、ゆっくり寝られる。

でも、ウチに帰るって、もっともクリエイティビティがないサボり方じゃないかと思う。社会とつながってないから、ネタも生まれないし。

しかし、ある日の昼食後、沼から出て来た30本の手で引っ張られるようなキョーレツな眠気に襲われた。アポもなかったので、家に帰ることに。

午睡を終え、夕礼に間に合うように帰社しようと近所の駅に向かっていたら、同じチームの男のコが真正面から歩いてきた。

ああ、やっぱり神様は見てるんだにゃ〜と、確信するの巻。仕事してたような顔をして、余裕満々で微笑んだつもりだったけど、バレバレでしょう。消せないまったり感が、全身にまとわりついていたはず。

大アクビしたら、思わず顔がなくなっちゃいました。我ながら、牙が鋭いにゃ~(ミッケ)