ホテルに到着すると、シャワーもそこそこに、焼肉を求め夜の街へ飛び出した。吟味する余裕はなく、とりあえず裏通りの居酒屋風焼肉屋へ。
好奇心に満ちたサラリーマンの目、目、目。当時の韓国では、女性が一人で飲みに行くなんて、はしたないことだったらしい。
しかし焼肉食べたいという煩悩は、すべてを上回った。
眞露と豚焼肉で幸せに浸っていると、若いサラリーマンに話しかけられた。
日本に留学していた彼、曙橋のとある持ち帰り寿司店でバイトしていたという。一気に親近感が湧き上がり、彼が通訳となって、しばし盛り上がった。隣りには、ほろ酔い気分の彼の上司。
上司に年齢を訊かれたので、5歳ほどサバを読んで答えた。ヨーロッパでは日本人は若く見られるので、すっかり習慣になってたあたし。
「・°°・°°・。ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌」
彼が韓国語で伝えると、気持ちよさそうに酔っ払い、赤い顔をした上司が、ニコニコしながら何か言った。困惑の表情を浮かべる彼。訳そうとしない。
「ねえ、何て言ったの?」
「うーーーん、えーーーっと、あなたは実際には今言った年より5歳位年上に見えるけれど、とても健康そうだって、言ってる」
ヨーロッパではごまかせたが、アジアでは、ほろ酔いのオジサンにニコニコ見抜かれた。
営業しているときも、状況によっては、本当じゃないコトを言うことがある。
ただ、ちゃーんと状況をよく吟味しないと、コケる。ただの胡散臭いヤツになることも。その瞬間の空気、言った後どうなるか、誰も傷つかず、深刻な事態を引き起こすこともない、そんなセンスのあるウソをつきたいもんだにゃ。