外人モデル@コンビニのレジ

一番印象深い仕事は、外国人モデルのマネージャー。 
この仕事がキッカケで、ラテン系ともご縁ができた。

外国人モデルのマネージャーとは、モデルたちをオーディションに連れていき、売り込む、営業兼通訳みたいなもの。

モデルというと、ワガママ、気位が高い、エキセントリック、そんなイメージがあるかも。ま、確かにそういうコもいたけど、案外フツーの感覚を持っているコも多い。とはいえ、こんな変わり種も。

「ビックリした〜! コンビニに行ったら、Aがレジに立ってた」。
ある日、売れっ子モデルのCが事務所に来て、無邪気に報告した。

「働いてたの?」


事務所のスタッフも、ビックリ。
「そう、制服着て」
「モデルの就労ビザで日本にいるのに、そんなことしたら法律違反だ」
「お金はもらってないから、いいんだって」
「じゃ、なぜ働いてるの?」
「コンビニにしょっちゅう行ってるうちに仲よくなったらしい」
「でも、働かなくてもいいじゃない」
「ヒマなんじゃないの。仕事入ってないし」。

そう、Aは売れていなかった。他人のことが気になるタイプで、あれこれ詮索する。自分の仕事を求めて一直線なモデルが多いなかで、こういうタイプは珍しい。ただ、人を気にかける優しさとは、ちょいと違う。

「でも、日本語喋れないでしょ」
事務所スタッフがたたみかける。
「レジに表示された金額を指差して、ニコッと笑ってたよ。男性のお客さんは、ニマニマしてうれしそうだった」
「・・・・・」

Aを事務所に呼んで話を聞いたけど、話が長いだけで、よくわからない。帰国日も近いので放置することになり、しばらくして無事?帰国。

対照的に、Cはたんまり仕事をして、大金とともに帰国。

二人ともオランダ人、年齢も20代前半で、ほぼいっしょ。しかし性格は両極端。Aは深く深くモノを考えるタイプ。Cはお気楽。

売れるためには、スタイルや時流に乗った顔かどうかも必要な要素だけど、無邪気さ、お気楽さ、愛嬌も大切。ま、あんまり考えなさ過ぎると、後でまとめて返ってくるかもしれないけど。

半年ほど過ぎたころ、Cが再来日した。
「あっ、そういえば、Aはどうしてる?」
事務所のスタッフが訊いた。
「彼女は、モデルをやめたわ」

ワールドカップで大快進撃を続けるオランダの試合を見てたら、彼女たちのことを思い出した。今ごろどうしてるのかな。

<このとき、学べたこと>
モノゴトうまく進めるにはお気楽さも必要。深く深く考えても、答えが出るとは限らない。