夫の暴力で結婚生活は破綻。フォルトゥナータは闇で訪問美容の仕事をしながら、一人娘のバルバラ(8歳)を育てている。自分の美容室をオープンする夢を実現するため、寝る間も惜しんで奮闘しているが、留守がちな母に不満を持つ娘は反抗的で、精神的にも不安定。離婚調停中のDV夫が深夜に押しかけてきたりして、綱渡りのような生活を送っている。
幼馴染のチカーノは、刺青彫り師。ドラッグに手を染めつつも、認知症で元舞台女優の母親を介護しながら、バルバラの面倒も見てくれる心優しい人。
ある時、娘のカウンセリングを勧められ、渋々応じたフォルトゥナータだったが、担当の精神科医にほのかな好意を持ってしまう。そんな彼女を待ち受けていたのは...。
フォルトゥナータは、ラテン系の激しいキャラ、自己主張もキッチリするタイプ。昔見てたコロンビアのテレノベラ(大長編TVドラマ)に出てた女優さんを思い出した。
ストレートに叫んだり怒ったり、感情剥き出しのフォルトゥナータを見てると、なぜか落ち着く。
愛に生きるイタリア人だから?! 大声で怒鳴りあっているうちに、人目も気にせず、精神科医ときつ〜く抱擁しあったり、仕事のフリをして、娘をチカーノに預け、精神科医と旅行に出かけたり。フォルトゥナータは、隙だらけ。でも表裏がなく、人間らしさに溢れていて、惹かれるんだよなぁ。
90年代前半のヒット曲、The Cure "Friday I'm In Love" が効果的に使われていて、キュンとなったりもした。
ふと思い立って前日セブンイレブンでチケット購入。会場を間違えて六本木に行ってしまい、紆余曲折の果て、本篇開始10秒前に会場入り。魅力的な映画に出会えてよかった。一般公開されたら、ぜひ観てみてにゃ。ちなみにヒロインの名前「フォルトゥナータ」は、幸運の意味。
2018/05/03 @有楽町朝日ホール
【ここからネタバレ】読むときは、スクロールしてね:)
チカーノの母の認知症はどんどん進行し、元女優の母は、彼をマネージャーだと勘違いするようになった。苦悩の果てに、彼は母を殺してしまう。
フォルトゥナータにも、幼少期に暗い過去が。父と一緒に海に行ったとき、溺死する父を助けようともせず、黙って、ただ見ていたのだ。
そして、精神科医にも家族を捨て、行方不明になった父がいた。
ラストシーンは、チカーノに彫ってもらった背中いっぱいに広がるタトゥーを見せながら、裸で海に入っていくフォルトゥナータ。自殺? 流れる曲は「生きる(VIVERE)」。
バルバラを抱いたフォルトゥナータの力強い表情の静止画が、ラストショット。